膀胱腫瘍は日本では1年で10万中で約8人の人が罹患します.男性には女性の3倍以上の頻度で発生し,70から79歳の高齢者が罹患しやすい疾患です.タバコを吸う人の発症率はより高くなります.
症状は,85%の人が無痛性血尿といって尿に血液が混じる以外に症状のない状態で検査を受けて診断されます.しかし,排尿通や頻尿などの膀胱炎症状や腰痛,腹痛で発見される方もいます. ![]()
診断には,尿検査や超音波検査や,X線検査も行われますが,最も重要な検査は膀胱鏡検査です.CTは,腫瘍の浸潤,転移を知る目的で行われます
下に示すのは典型的な膀胱鏡でみた乳頭状腫瘍(左)と非乳頭状腫瘍(右)で後者の方が悪性の度合いが高くなります.
![]() |
![]() |
腫瘍が膀胱壁の筋肉層まで進展しているか粘膜内に留まっているかで治療方法が全く異なります.

図に示す様に筋層まで浸潤のないT1までの表在性腫瘍はほとんどが経尿道的切除術で治療可能です.この方法は,膀胱を温存することが出来るので患者さんの生活の質を低下させる心配はありません.ただし,CIS(上皮内癌)という,腫瘍の隆起がほとんど認められないタイプや,腫瘍の悪性度がグレード3に属する場合は,急速に進行癌に進展してゆきますので経尿道的切除術のみでの治療に限界があります.また,これらに属しない一般的な表在性腫瘍でも経尿道的手術後の5年以内の再発率は40%程度あります.ただ,再発が多くても大半は,悪性度が上がることはなく,再発時も同じ経尿道的手術で対処できる場合がほとんどです.
再発を防止するため,手術後膀胱内に抗ガン剤を注入する治療が良く行われます.効果,副作用,費用を考慮して治療計画が作られますが,私共はOkamotoらのとの共同研究で得た成果より,テラルビシンの手術直後単回投与を行っています.その効果の詳細については右のグラフをクリックして名古屋大学医学部泌尿器科のページを御参照下さい.

経尿道的切除術のみで治療が困難な上皮内癌(CIS)や経尿道的切除術後に再発を繰り返す場合にはBCGを膀胱内に注入する治療が行われます.
T2以上の腫瘍は,経尿道的切除術のみでは治療困難で,開腹し膀胱を摘出する必要があります.同時に転移しやすい骨盤内のリンパ節も切除します.
膀胱を摘出すると,尿をためることが出来なくなるため,尿を貯めたり排出させるために尿路の再建術が必要となります.これを尿路変向術といいますが,これには,以下に示す3つの方法があります.
回腸導管
尿を小腸の一部を用いて造った導管に通し,これをストーマという出口を腹壁に作り,ここに採尿用のパックを貼る方法です.
導尿型代用膀胱
小腸を用いて,尿を腹腔内で貯める代用膀胱を造り,たまった尿は尿が自然には流失せず導尿の時だけ使用する小さなストーマからカテーテルを挿入して尿を体外に排泄させる方法です.手術は回腸導管より大きくなりますが,排尿用のパックが不要で患者さんにとって生活の質の向上が望めます.
自排尿型代用膀胱
同じく,小腸を用いて代用膀胱を造りますが,ストーマは造らず,代用膀胱を残された尿道につなぎ尿道から尿を排出させる方法です.本当の膀胱からの排尿に比べると排尿に時間がかかったり,時々代用膀胱にたまった粘液などを正常して体外に排出させる等の手間もかかりますが,尿路変向術の中では最も優れています.
4.生存率 社会保険中京病院およびその関連施設で膀胱全摘術を受けた場合の5年生存率は,T2aで70%余,T2bで50%,T3,T4で25%でした.ただし,この数字は癌以外で亡くなられた方も含まれています.(日本泌尿器科学会誌 社会保険中京病院 栗木 修 論文より)
