腎癌

1.腎癌とは
2.診断方法

3.治療方法と成績




1.           腎癌とは

腎癌は,腎臓の尿を作る実質部分から発生します.腎臓から発生する発生する悪性腫瘍の中で最もよく見られる腫瘍です.10万に中3人弱の発生頻度で,胃癌や大腸癌に比べればそれほど多い癌ではありません.一般的に高齢者に発生しやすく,男女では男性の方が2倍以上罹患しやすいことが分かっています.

 日常診療では,直径2cm位と極小さく転移もない早期癌から直径10cmを越え,周辺臓器に浸潤したり肺や骨などに転移した進行癌まで,色々な進行度の癌が見られます.早期癌は,症状はなく,健康診断や,他の疾患の検査のために行われた,腹部エコーやCTなどの画像診断で診断されます.進行癌は,血尿,腰痛,発熱,腹部に触れる腫瘤などの症状をきっかけに診断され,時には転移病巣が先に見つかり,その後の検査で腎癌が診断されることもあります.当然,偶然発見された早期癌は適切な治療を行えば生命を脅かすことはほとんどありませんが,進行癌ではその治療には難渋することもしばしばです.

                           


2.           診断方法

診断方法で最も一般的なのは腹部超音波検査(腹部エコー)です. エコーで腫瘍が見つかると通常,CTやMRIIなどの検査で癌の大きさ,進展度,遠隔転移の有無を知る目的の検査が行われます.遠隔転移の有無については他に肺転移を診断するための胸部X線や胸部CT,骨転移を診断するための骨シンチなどが行われます.腎動脈造影はかつてはこの癌の診断に必須の検査でしたが,身体的負担が大きく,CTやMRIの精度の高まりにつれて最近ではほとんど行われなくなりました.

              病期

              上記の診断で,癌の大きさ進展度を知り,以下のように病期を分類します.

              腫瘍の進展度

              T1a:最大径が4.0cm以下で、腎に限局する腫瘍

              T1b:最大径が4.0cmをこえるが7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍

              T2:最大径が7.0cmを越え、腎に限局する腫瘍

              T3a:腫瘍は副腎または腎周囲脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜をこえない

              T3b:腫瘍は肉眼的に腎静脈または横隔膜下までの下大静脈に進展する

              T3c:腫瘍は肉眼的に横隔膜をこえる下大静脈内に進展する

T4:腫瘍はGerota筋膜を越えて浸潤する

              Gerota筋膜とはは腎筋膜ともいい、腎臓を包む固有の膜でこの筋膜内に脂肪と更にその内側に腎臓と副腎が包まれています.

              病期

              I T1またはT2でリンパ節転移,遠隔転移がない

              II T3aでリンパ節転移,遠隔転移がない

              III T3bでリンパ節転移,遠隔転移がない またはTに関係なくリンパ節転移があるが遠隔転移はない

              IV T4でリンパ節転移,遠隔転移がない またはTやリンパ節転移に関係なく遠隔転移がある

                           

3.           治療方法

病期I,IIに関しては根治的腎摘除術が標準的な治療法です.これは腎をこれを覆うGerota筋膜ごと摘出する方法です.
 普通、開腹して行われますが、T1腫瘍に関しては、社会保険中京病院では患者様の希望に応じて腹腔鏡下手術も行っています.下の図のように腹部に4〜5箇所の穴を開け内視鏡で腫瘍を含む腎を体内で剥離し,これを袋に入れ体外に引き出します.この際,腎は必要に応じて細切されます.
 腹腔鏡下手術で行う最大の利点は創(キズのこと)の大きさが小さいので,手術後の疼痛が軽く,回復も早いことです.通例,この方法で手術をを受けた方は,手術後2日目で歩行され,10日程度で退院可能な状態になります.

過去,30名近くの早期の腫瘍と考えられる方がこの方法で手術を受けられ,2名で術中,腹腔鏡下手術続行を諦め開腹手術に移行しましたが,これらの方も含め最長7年,平均3余経過観察し,癌の再発した方はいません.平成14年4月より正式に保険治療が適応となりました.

腹腔鏡下手術の創,内視鏡手術風景,腎の取り出し,細切後摘出された腎

詳しくは,名古屋大学医学部泌尿器科学教室のホームページの関連部分をご参照下さい.

病期Iで腎機能が反対側の腎が以前,別の疾患で摘出されたかもともと腎機能が悪い場合などは腫瘍とその周辺のみを切除し,患側の腎を半分以上残し,腎機能を温存する腎部分切除術を行う場合もあります.これも条件が良ければ腹腔鏡下手術が可能ですが,これについてはまだ開発段階にある手術といえます.T1で手術を受けた方の5年生存率は90%以上です.

病期IIIでは,開腹手術を行う場合が多くなります.この病期では根治的腎摘除術術のみでは治療は不十分で,手術後に通常,インターフェロンαなどの免疫療法を追加します.

摘出腎(T3):腎はほぼ腫瘍で置き換えられている

病期IVは症状緩和を目的に腎摘除術を行うこともありますが,一般的に手術療法の限界を超えており,インターフェロンαやインターロイキン2等の免疫療法を行いつつ症状に会わせた治療が行われますが、5年生存率は20〜30%程度です.
2008年4月より久しぶりの新薬としてソラフェニブが発売になりました.今までの抗ガン剤と異なり,ガンを小さくする働きは,あまり期待できませんが,腫瘍の増大が停止し,生存期間が長くなる人が対照群に比較し,長くなることが薬の開発治験で明らかになりました.日本人に対する効果,副作用はまだ明らかになっていませんが,経過を注意深く見守って行く必要があります.