新型インフルエンザへの対応

いわき地方では 9月26日現在、「小流行」だそうで

確かに 外来でも 「はやってる」という 印象はありません。

しかし 10がつになれば、 爆発的に増える可能性もあります。

 

9月15日 日本感染症学会から 緊急提言 (第2版) が 出ました。

5月に第一版を提言していましたが、この間の世界の流行と診療状況

そして日本における流行状態等を踏まえて、第2版となりました。

また、同学会から 新型インフルエンザ診療 ガイドライン も出ています。

以下に要点を書きます。(あくまでも 筆者=館山)の理解です

 

@ 新型インフルエンザは「弱毒」ではありません

  ウイルス学的に 「強毒」「弱毒」は 鳥インフルエンザに関して使う用語であり

 ヒトのインフルエンザには、「強毒」「弱毒」の概念はありません。

また 重症度に使うにしても 季節性ほど 軽度(Mild)ではなく 中等度(Moderate)です。

アジアかぜ 香港かぜ レベルの重症度と考えなければなりません。

季節性インフルエンザの致死率は 高齢者を中心として 0.1%程度程であるのに対して

新型インフルエンザは 若年者に多く WHOの発表では 1%近くになっています。

 

A 日本での新型インフルエンザの死亡例が少ないには 理由があります。

 諸外国に比べて 日本での致死率は きわめて低いものです。

 被害の大きな国では 発症後 一週間前後で受診しているのに対して、

 日本では 2,3日以内に受診しています。 

重症例や死亡例は 発症後 4〜5日後に呼吸不全を起こしています。

早期受診 早期診断 早期治療開始が 重要です。

 

B 蔓延拡大期の診断のあり方

迅速診断キットの普及は 日本の経験が世界で一番です。

しかし 新型インフルエンザに対しては 感度が良好とはいえず

陽性率は 50〜60% あるいは 40〜70% とされます。従って

「臨床の場では サーベイランスによって得られた 全国の情報と地域の情報を

すばやく効果的に把握しながら臨床診断を行うことが求められます」

 

C タミフルやリレンザで早期から積極的に治療すべき

WHOの治療ガイドラインでは 軽症の若年者や健常成人に タミフル リレンザは

必ずしも必要がないと記載されました(米国CDCも同様の記載です・・・ 筆者注)

しかし、メキシコの重症例、死亡例では 入院前に 抗インフルエンザ薬が 投与されていませんでした。

一方医療スタッフにもインフルエンザ様症状がでましたが、タミフルを早期投与され

重症化例は 一例もありませんでした。

また アメリカでも 多数の重症例 死亡例(しかも 若年者)がでましたが、

早期の抗インフルエンザ薬は投与されていませんでした。

日本で被害が少ないのは、早期受診と 早期の抗インフルエンザ薬投与開始にあると考えられます。

10歳代の患者への タミフル投与は 厚生労働省の使用注意制限は解除されていませんが

「副作用を説明し保護者が投与後最低2日間監視」するならタミフル使用可能とのことです。

「妊婦、乳幼児および10歳代の小児を含む患者へ早期から抗インフエンザ薬の投与」を推奨しています。

新型インフルエンザにおける 抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)の役割は (季節性と違い)

重症化 入院 死亡 を防止することにあります。

諸外国で、軽症例に対して抗インフルエンザ薬が必ずしも必要にないとする理由は

主にコストです。 日本は タミフル備蓄率は 世界4位で 5000万分あります。

(たとえば タイでは 人口の1%分しかありません)

 

D 細菌性肺炎や呼吸不全例への対処が重要

今のところ ウイルス性肺炎による死亡例が多いが 「新型インフルエンザが蔓延すると

細菌性肺炎が多発する」ところなる現象です。

 これは 抗インフルエンザ薬は投与されていないものの、抗菌薬が投与されていることも原因と考えられます。

抗菌薬により細菌性肺炎への進展が阻止され、ウイルス性肺炎が相対的に多いものと考えられます。

日本では 抗インフルエンザ薬と抗菌剤を共に投与するために 重症例は少ないと考えられます。

高齢者では いったん感染すると 肺炎が重症化しやすく、レスピレターが必要となる例が多くなります。

肺炎球菌は 肺炎の原因として最多であるだけでなく、重症化しやすく、最も警戒すべき菌である。

肺炎球菌ワクチンが重要であるが、日本では普及率が低い。また 再接種も認められていない。

諸外国では インフルエンザワクチンと 肺炎球菌ワクチンの同時接種も広く行われています。

 

E 医療従事者の感染予防は臨機応変に行うべき

手洗い、サージカルマスク、必要に応じてN95マスク ゴーグルの使用 に加えて

抗インフルエンザ薬の 予防投与は極めて重要で効果的です。

多数の患者と接触する医療従事者では 流行の後半では 免疫を獲得している可能性もありますが

流行初期に対処が大切で、(状況によっては) 予防投与を考慮すべきです。

マスクについては CDCは 効用を認めていません。また WHOも 今までは マスクに言及することは

ありませんでしたが、今回 限定的な範囲にとどまるものの マスクについて言及しています。

しかし エビデンスは極めて少ないのいが現状です。 咳エチケットについても CDCが提唱していますが

有用性に関する成績は ほとんどありません。

 

F 新規治療薬の早期承認が望まれます

 タミフル リレンザ に続く 新たな抗インフルエンザ薬については 3種類 日本を中心に開発中です。

ペラミビル と CS−8958 は ノイラミターゼ阻害剤で 2009年8月 臨床第V相比較試験終了し

年内承認申請の予定。また RNAポリメラーゼ阻害剤の T−705は  一年遅れで 承認申請の予定です。

 

G すべての医療機関が新型インフルエンザ対策を行うべきです