資料編2

鋼鉄の時代 web版
 本文は過去に同人誌として発表したものの再録で、本家シリーズ中で説明仕切れない部分のフォロー等を目的として発行しています。
 今回のテーマは「鉄」。春秋戦国の時代に登場した鉄器ですが、時代の変化にどのように関わったのか、あるいは関わらなかったのか、結構重要な問題なので放置して先へ進めなくなり、著者なりに調べました。
 やはりというか、ビッグバンから始めねば説明しきれないことが判明。本編中には収まらないことが確定しましたので資料編行きに。この調子で、本編の方も商(殷)周革命どころか、恐竜絶滅から始めそうな今日この頃、いやあ今世紀中に新刊がでたら20世紀最後の奇跡かも…。(←それどころか、結局、古生代(爬虫類誕生あたり)からはじめちゃいました…。)
 もし専門家の方で間違い等にお気付きの方がいらっしゃいましたら、今後の参考にしたいと思いますので、御連絡いただければ幸いです。


 第1章:鉄の誕生 水の惑星〜

 宇宙が誕生した時、まず水素とヘリウムが生成された。この時点で他の元素はまだ存在しない。これはビッグバンで撒かれた物質の拡散と冷却が余りにも早かったためで、これが十分にゆっくりと行われていたら、核融合を繰り返した後、原子核の最も安定した鉄が多量に作られていただろう。宇宙に存在する元素の98%までが水素とヘリウムである。そして残り2%にその他の元素がすべて含まれ、その中では鉄が突出して多い。

 やがて、水素とヘリウムを材料に恒星が誕生し、その内部で核融合が行われて、その他の様々な原子が作られる(但し鉄より重い原子はほとんど作られない)。そして、この恒星が超新星爆発によりその寿命を終えると、バラ撒かれた物質によりまた新たな星が誕生する。

こうして誕生した第二世代の恒星系〜太陽系の惑星である地球は隕石の衝突の繰り返しによって生まれた星であるため、水素とヘリウムの固まりである恒星より当然重い元素で構成される。地表から16kmまでの地殻中に含まれる元素の含有率は酸素46.6%、ケイ素27.7%、アルミニウム8.13%、鉄5.00%、カルシウム3.63%、ナトリウム2.83%…。と、鉄はアルミニウムに次いで多い金属である。ちなみに鉄以前に最も利用されていた銅は0.01%とこれらに比べるとかなり少なく、貴金属の代表格である金などは0.00000005%と極めて少ない。最も多いアルミニウムであっても、地殻中にこの割合いで均一に分布しているのであれば、現在の技術をもってしても産業として成り立つことができるほど効率のよい精錬法は無く、これでは資源とはいえない。これらの鉱物資源が何千年も前から有効利用されてきたのは鉱石などの濃縮された形で所々に存在していたからである。しかし、このように星の表面近くに重い元素が濃縮した形で存在するケースは稀なことである。

 地球のような固い地殻で覆われた惑星(または衛星)は前述のように隕石の衝突によって誕生した。この衝突が盛んであった時はお互いがぶつかった時のエネルギーにより高熱が発生し、隕石を構成していた物質は溶かされてマグマとなる。やがて隕石の衝突がほとんど収まると、星の表面からマグマは冷やされていき固い地殻ができた。この冷却が急激に行われない限り、軽い物質ほど表面近くに、逆に重い物質ほど星の中心部近くに集中する。だから地球全体を構成する元素としては突出して多いはずである鉄は、前述した通り、地表近くには少ないのである。

 現在、地球の地殻はいくつかのプレートに別れマントルの対流に乗って移動しているが、プレートどうしがぶつかり合い沈み込んでいるところでは、互いの摩擦熱により岩盤が溶けてマグマとなり、地下数キロの地点にマグマだまりができる。マグマはやがて冷やされてその中に含まれる様々な鉱物が結晶となるが、この時これらの結晶はマグマに含まれる熱水に溶け、マグマより軽い水は上昇し周囲の岩盤を割って浸透、水が冷やされることによって溶け込んでいた鉱物は再結晶化する。このように水の働きなどによりより物質が濃く集められることを濃集という。また、更にこれらの鉱物が地下水に溶かされ沈澱することにより、何度も濃集を繰り返し、高濃度の鉱石が誕生したのである。以上の理由で、水(少なくとも地下水)が流れた期間の無い(あるいは少ない)星(月など)では地表近くで鉄などの鉱物資源はほとんど採取できない。鉱物資源は「水の惑星」の賜物なのだ。

 銅や金、銀は存在する量は少ないが、ほとんどそのまま利用できる形で自然界に存在しているのに対し、鉄は通常地上では酸化鉄としてしか存在せず自然金、自然銀、自然銅に相当する自然鉄は無い。地表付近に存在する鉄は光合成によって酸素を造り出す植物が海中に誕生して以来、生命が地上に現れるまでは酸化した赤茶けた岩肌を何十億年もさらし続けていたのである。

 鉄の酸化物(鉱石)としては赤鉄鉱(FeO)、磁鉄鉱(Fe3O4)、褐鉄鉱(含水酸化鉄Fe2O3nH2O)、炭酸菱鉄鉱(FeCO3)などがあり、また黄銅鉱なども鉄が含まれている。ただ、まれに鉄を多く含んだ隕石(隕鉄)が地球外より飛来することがあり、これらは銅などと同じく、早くから利用されてきた。

 隕鉄や自然銅は石材同様そのまま叩いたり磨いたりして使えるものもあったが、後に溶鉱炉の発明によりマグマの状態を人工的に再現し、更に濃集させたり自由な形に変形させたりすることが可能となった。この発明をもって人類は金属器時代を迎えることになる。

以下第2章に続く。


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