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ニューヨークでの事件



武道との出会いはそんなに古くはない 今から十三年前だ ニューヨークに遊 びに行ったときに現地で知り合った日本人の新婚のカップルが地下鉄で襲われて金を取 られてからだ 彼らのきままな行動に触発されて私もあの街の深夜を歩き回るようにな った矢先だった  事件の次の日の朝こわばった顔の二人に聞いた話はこうである
地下鉄の中で黒人二人組が隣りの箱からやってきて大声で叫んだ それを聞く て何人かいた乗客は全員そそくさと二人をおいてとなりの箱に移動してしてしまった 
男達は座っている二人の前に立ちはだかって金を要求した
一人は目の焦点が合わないような見るからにいかれた様子だったそうである 
金を一枚づつ渡しながら京セラのあの当時出始めのサムライに男の手がかかっ た時 隣りの箱から一人のスーツ姿の女性が飛び込んで来て大声で男達を叱りつけた
女性に怒鳴られると二人の男は逃げて行った、、、
この話を聞いて自分もズボンが濡れるほど冷や汗をかいていた もちろん恐ろ しくてである その時、金をせびられながら彼はアイアムソリーと言ったそうである 
それを聞いて多分自分もそう言っただろうと思い屈辱感に顔が赤くなる思いだ った 
それから仕事の都合で年に一度は外国を訪れる 外国に行けば誰もが日本にい るときと 比較にならない位に危険に対して敏感になるのではないだろうか たとえ善意 の相手にあってもよってこられただけで内心びくびくものである 
勇気を持ってなどということはそれだけの生存に関する力の裏付けがなければ なかなか言えることではないのだ
それから知り合いの紹介で少林寺拳法の門をたたいた 正直入門前はかなりの 抵抗感があった 
私の趣味は音楽と読書である しかも子供の頃から運動神経が鈍く体育は2だ った 
そして大学に入って見たあの体育会の連中の先輩職員に対する奉公の態度を見 ると人間は奴隷ごっこが好きなのかと思ったりさえした 入門しても虎のパンツを吐い た暴力漢達の機嫌をとりながら技をならうのだろうなどといささ憂鬱になったりしてい たのだ 
さて、入門して、、、
驚いたことに人間として一番卑屈で程度の低いのは他ならぬこの私であった
立ち居振る舞いから話し方に至るまで自分のゆがみを痛切に感じさせる道場の 修行だった 
先生はこの世界でも名人と言われる方であった 人に会うのが仕事であっ た私もうなってしまうような人物の方である それから、何度も学びながら自分の固 定観念が ひっくりかえっていった 
先生との出会い、、、道場の印象の意外さ、、、これが最初の価値観の逆転だ った