H君のおかげで怠惰な数年が過去のものなりつつあった とにかく手も足出ないのだ 以前ならあっさり 苦笑いで引き下がったところだろうが 今度は少し違っていた 彼と二人で型の練習をする
彼のいかに長い手足でも 型では私は間合いに入って反撃が出来る 当たり前の話だ 申し合わせの稽古で彼がどこを攻撃してくるのかわかっているのだから、、、こちらも余裕で十分な反撃体制を作れる ところが いざ自由に打ち合うと彼のなぎなたを振るうような回し蹴りでこちらは態勢をくずしてしまう 彼が巧妙にこちらの入りばなを狙って蹴ってくるから どうしてもこちらの防御が遅れ気味となる そしてその半拍の遅れを維持したまま 攻めきってしまうのだ 前に出る彼の速さと後じさりする私のでは問題ならない どこかで必ず彼の攻撃を貰うのだ
型なんて使えません とにかく先手必勝です、、、多くの人の言葉が頭をよぎる
それでも、その先制攻撃においても彼の方が速さ体格共に断然上回っているのだ もし 私の攻撃が実を結ぶとすれば イメージの中の最終形はやはり普段の練習でやっている型の中のどれかになるしかなかった 彼の攻撃をかいくぐっての反撃つまり、クロスプレーだ
一体では 型の中のどれが彼に通用するのだろうか、、、どれか見つけてそれだけを練習すれば使えるかも知れない レポート用紙に今まで習った突き蹴りの型を表にしてみた 突きをさばいて反撃する型と蹴りをさばいて反撃するもの 大別すればこの二つになる
足の上がらない肥満体の私は蹴り技は苦手であった 突きで決める型を使わねばならない 技だって彼が上なのだ せめて五本の内一本でも入れたいという こちらはそんな情けないつもりで技を探しているのだ
紙に攻者と守者の絵を描いて戦わせて見る 驚いたことに 先手(攻者)が突きで来ると見せかけてぎりぎりで回し蹴りをかけて来ると後手が突きで反撃する技は使えないと気づいた、、、
型通りに動けば貰うか なんとかとっさに蹴りを手で受けておわり、、、私の場合ならすぐに彼の二連目の突きを貰うところだ
ひどい絶望感、、、やはり型は使えないのか、、、双方等速に動いたとして何度やっても結果は同じだった 技で初めて生じた疑問 本来ならもっと早く気づくべきだったろう その後私はこの問題と長い旅をすることになった
|