道場にかよってすぐに腰が痛くなりはじめた むりもない165センチの体重
に77キロの肥満体である ひどく力んで突き蹴りの練習をやる 自分も男だ やり始める
と夢中になった
体を動かすよろこび 大声で気合いを出せばストレス解消にもなる 一見いい
ことづくめに思える 最初の一月で自分が途方もなく以前と比べて強くなったような気がし
た
あの頃を思えばなつかしくなる 今入門してくる人を見ると簡単に思い出され
る とにかく 誤解をしていたのだ 先生はことあるごとに楽に構えろ 柔らかく鞭のような
突き、蹴りをと 助言してくれるがこちらは全く上の空であった 昔の豪傑のようにただ猛獣の
ように暴れ回ることができればよいと考えているのだから始末におえない
悪い稽古だったらしない方がよい かえって回数が多いだけ技から遠くなるから、、、
そう先生に言われても正直に笑った なにかひどくもったいぶったように聞こ
えたからだ
殴る蹴るの動きは自分にとって極めて単純な動作に思えた 大人の筋力でこの
動作をするの
だから破壊力は十分だろう 後はこれが休みなく続けらればそれでいいのだと
思った
仕事で材木の積み卸しをした時に腰を痛めたらしい 痛みはたえず左の腰から
じんわりと
膝に下りてくる それでも道場には行った 練習の間は忘れられるからだ い
つか取れるだろ
う そう思っていたが甘かった 痛みは日ましにつのってくる どうにも顔が
ゆがむようだ
道場を紹介してもらった宇野さんに誘われて整体の治療院に行くことにした
自分もいくから来ないかといわれ素直について行った それまで民間の治療院
には行ったことがなかった どこかいい加減なもののようなイメージがあったからだ
自由が丘の天真治療院に行く 鶴田先生は少林寺拳法も六段だそうで同門の高
段者ということで安心した 宇野さんが言うには鶴田先生には不思議な治療ができるので是
非やってもらえと進められる 業捨という民間療法らしい とにかく痛いけど効果は満点だ
と彼は言う
腰の痛みがなおるんならなんでも頼みますとベッドに寝た
業捨という治療は奇想天外なものだった 薄いシャツの上から爪をたてて体中
をひっかくのである 軽くこすっているようだが とにかく飛び上がる位にいたい 鶴田先
生は休む間もなく体中をひっかいていく どんな人でも声をあげなかった人はいないと言う
位の痛み
私は大声をあげて痛みを訴えた たちまち体中 真っ赤になった こすった所
が汚い赤色になっていく これが業なんです つまり体の老廃物やなにかで痛い思いをした
からこれだけ短い時間で出たんだよ 鶴田先生は笑って言うがこちらは目には涙がたまって
いた
それから 背骨と腰骨の矯正をしておしまい 三十分位の治療だったが驚いた
事に腰痛は その場でおさまっていた 体中が真っ赤になっている どうしてこんなに痛い
のか 軽く爪でこするだけなのに、、、後に中国の民間療法でスプーンで体をひっかいて
真っ赤にしている記事を見たが多分、原理は同じなのだろう その後何度もやって貰ったが
回を追うことに痛みと発色は薄くなっていったのは不思議だ 業が出たんだよと鶴田先生は
笑うが、、、
その後かなりの知り合いにこの治療を紹介したが色々な症状に劇的に効果があ
った 家内の肩こりも一回で直った ガンの家系のせいか 体中が黄変したのには驚いた
痛くてつらいのだが効果がある泣きながら通う人が多い
太っているから酒かたばこのどちらかはやめる事 なるべく肉食はさける事
などの助言を貰った 酒をひどく飲むんですと私が言うとこの治療すると飲めなくなるよと
言われそれもその後的中した
道場になれてわかったことだがかなりの時間をさいて人間の経絡の説明がなさ
れる 人間の体を走っている電気のような道でツボと呼ばれるものはその線上にあると考え
られている
西洋医学では全く証明されていないツボの道ではあるが実際にそこを攻めて貰
うと激烈な痛みを感じる たしかに経絡は存在するようだ 鍼灸の国家試験があるのを見れ
ば当然だがこの年(二十八才)になるまで全く知らない事だった 道場の先輩で治療院を開
業している人は五人もいるとわかって驚いた 技の研究をしているうちに本業になってしま
う人がいるのだろう
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