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打ち合いの中の素朴な疑問



初段をとるまでの三年間 月に一度程度だったと思うが乱取り稽古をした 
初回で赤恥をかいてしまったので 努めて紳士的に振る舞うようにした なにせ私が飛び抜けて年上なのだ 若い人達への気遣いがないようでは何の為の修行かわからない
興奮症は次第におさまっていったが今度は物足りない気持ちになった
級があがれば多少突き蹴りの速さは増す それで同クラス程度同士であれば 相手の攻撃が来れば下がって逃げて 今度は自分の番だと相手が逃げ回る そのうちボクシングのようなピョンピョン動くステップを誰かが使いはじめるとすぐにそれが皆に伝染した
一人どうしてもやられる高校生がいた 彼の戦術はただ一つ 突きを上段中段に打っておいて下がってよけた相手にまわしげりで決めるのだ 二つ打ってからの一歩の踏み込みが素晴らしく深いので こちらがよけきれずに三本目に蹴りを貰うのだ  防具を通して彼のつま先が小気味よく衝撃を持ってこちらの脇腹に当たるとしまったと言うよりうらやましさでいっぱいになってしまう こちらも精一杯間合いをつめてお返ししようとするのだがいいようにあしらわれてしまう 
そして彼の攻撃になると又一本、、、
少し動くと 出きる技も少ないのでお互いの技がわかるともうすることがないのだ しかも普段の型稽古にあるような 相手の攻撃を紙一重でかわして反撃する などと言うことはまぐれでも出ない なんだかそれがひどく自分には残念に思われた
古い先輩に聞いて見ると それは無理です 十五年やってますが一回しか使えたことないですから、、、などと真顔で言われる 
それから皆が異口同音に言うのは 教えの中で相手の攻撃を待ってから反撃した方が有利というのは嘘であってとにかく先手必勝が鉄則と言うことだ
残念ながら毎日修行している 稽古の型というのは使えないらしいのだ 
あらゆる伝統的な武道の型と言うものはすべて 後手必勝の形をとっている
先に手を出した方が有利と言葉に残しているのは私の知る限り異能の天才宮本武蔵だけである 二天一流の型は後手必勝ではあるが、、、
まだ、初心の私にはもちろん 問題を解消しようとする意気込みすらわくことはなかった
ところがある日 区の少林寺拳法の大会で模範試合の形で道場の二人の高段者の乱取りを見て驚いた 道場最高の使い手の一人であるO先輩がまさに型通りに相手の突き蹴りをさばいてばしばしと一本を決めていく 相手のHさんははるかに長身の大学生で三段 普段は恐ろしくて私など一緒に練習ができない位の猛者である
その後 O先輩から人間は右手右足 左手左足しかないのだからよく見ればこのうちのどれが来るかはわかりますと教わった 
そんな教示を貰ったけれど私は全くレベルが低すぎた 相手の一歩の踏み込みに二歩下がって攻撃をよけるというようなそんな 相手と絡めない動きしかしようとしなかった
逆にそういった相手を翻弄するような敏捷さがやはり必要と感じたりもした もし本当にそうなら運動神経が鈍い私にこれ以上の上達は望み薄だと覚悟もした