壱 わたしはこれで会をやめました。

 以下、JEAN(日本環境アクションネットワーク)の会報(No.88-- 2000.11発行)に寄稿した

文章。

 最近キレテイル私の状況理解の一助に......


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中部国際空港のこと
              
      ------愛知の公
事業-----        

 はじめまして。かつて「藤前干潟を守る会」の活動に協力しておりました。過去形なのは、この9月をもって「守る会」への活動協力を停止したからで、それまでかれこれ5年強、ここ数年は底生生物調査の担当ということで活動しておりました。
 何故停止を? というと、話せば長いことながら、昨年末から今年にかけて、愛知万博の計画が雪隠詰めに。「自然保護団と話し合え」とのことで「検討会議」なるものが立ち上げられた。
 ところがこれがとんでもない代物で、「反万博」の意見を持つ者には、万博協会より「あなたは検討会議の委員になってもらっては困る。」というお言葉がいただける。「ゼロ案」も含めた複数案の検討、十分な議論、といった様々な約束事は片っ端から反古にされる。県知事は「検討会議で民意は反映されている。」などとおかしなことを言う。そうか、万博に反対するものは市民じゃないとこういうことか。
 「藤前干潟を守る会」からも代表として委員が出ているわけですが、ここで、それまでの会の主張と現実が大きく食い違ってきた・・・少なくとも私にはそう思えた。
 「これ以上海を埋めるな。」とする今までの主張からすれば、現在の形の万博ならば、そのものをやめる側で働かねばならない。百歩譲っても、出自が「藤前干潟を守る会」であるならば、海上の森の使用は、断固止めねばならない。と私などは思っていたのだが、どうもそういうことではなかったらしい。

 7/24の合意に際しても、「条件付き賛成」とのことであったが、あの案に「賛成」と表明してもいいのか?
 あまつさえ、(条件付きでも)「推進すべきである。」などという発言は、公共事業が止まった稀な例である「藤前」の人間が言ってはならない。と私は思っている。
 しかし、前述のような言動があれば「万博推進側の団体」と見なされてしまう。当然、そこに協力する奴も推進派だ、ということになりはしないか。
 というような次第で、もとより万博・空港反対の立場であり、控えめで忍耐強い私も、ここに至って堪忍袋の緒が切れて「もう協力しねぇ、辞めちゃる。」となったわけです。

 さて、前置が長くなりましたが、中部新空港(以後新空港)について話すとなると、万博の話に言及せざるを得ないからなのです。そこで、サブタイトルは、
            
      ----愛知の公
事業------       ということに......。

 今、常滑沖は、新空港の開港(2005年3月)に向けてすさまじい勢いで埋め立て工事が行われています。

 なぜ2005年の3月なのか。「環境博」という名前の環境破壊事業である愛知万博の開催1週間前が新空港の開港予定日なのです。
 愛知万博を起爆剤にして、新空港、リニア、第二東名と、大型プロジェクトをつるべ打ちにして、中部の活性化を図り...というのが、この地方にあった20世紀型の環境破壊型開発。
 ですから、ここで万博を止められれば、続く開発を止められるか、または開始を遅らせることができたであろうに、と思われてなりません。
       
 まさに、「市民
惨禍の環境

 新空港の問題を過剰書きにしてみましょう。
1,本当に要るのか?
2,財政面は?
3,環境影響は?
4,その他

1,本当に要るのか?
 関空の先例を見るまでもないでしょう。県内に2つも空港を造っても、客の取り合いになるだけでは。そうでなくともそこら中の空港が拡張し、あるいは新しく建設し、という状況で、果たして年間2000万人もの利用者が確保できるのだろうか。
 単に利用者、と書いたのは、航空機の利用者がこの数字になることはあり得ないと思うからです。ところで2000万人というのは、どうやって計上したのかというと、新横浜から京都の間に住む人が、優先的に新空港を選ぶ、という前提で出した数字だという。
 ちなみに、関空の2015年の需要想定は、4000万人弱。こう言っちゃなんですが、私はうまれてこのかた30年以上、仕事や旅行で空港を利用したことはないよ。子供は減ってるし、この状況を冷静に見て、どうして2005年に需要が2倍(1998年度名古屋空港の実績が1017万人)と言えるのか? 今ある名古屋空港を全面廃止して新空港に持ってきたとしても、利用者が2倍になるとは思えない。現に、名古屋空港は残す、という話であるし。
 つまり、新空港は、空港としてでは目標を達成できないだろうということ。「レジャーランド空港島」としてなら、年間2000万人を集客できるかもしれない。しかしこの数字は東京ディズニーランドのそれを上回っているのだ。

 「飛行機降りたら即レジャー」をキャッチコピーにガンバレ新空港!

 ところで、名古屋空港が容量の限界に来ているのか? というとそうでもないらしい。空港の建物は改装したばかりだし、なぜ今さら新たな空港が要るのか?
 さらに、新空港は不便だ。どうやってアクセスするのだ? 青写真では、24時間営業の「ハブ空港」とのことであるが、それ程便数があるのか? いや、夜中に降りたはいいが、交通機関は止まっていて空港島から出られない。という事態に到るのではないか。立地条件の問題は後の項にゆずるとして、この御時世にあえて造る意味はあるのか?

2,財政面は?
 もともと、20世紀型公共事業では、国からの補助金を地方に取ってくる、ということが目的の一つである。
 が、愛知県は現状で十分財政危機であり、現状ですでに2兆円を越える県債を抱えている。かくいう私なども、給料が減らされはじめて、もう2年目になる。
 関西空港が国からの出資が7割近くであるのに対し、新空港は4割程度、関連事業の負担のほとんどが県にかかってくるであろう事を考えると、先行きは暗いと言わざるを得ないし、何よりただでさえ赤字の現状にさらなる負債を背負い込もうというのか。 
 新空港及び、関連工事も含めると、総額1兆5000億円を超える。そのうち、国からは2000億円くらいがやって来るくらいだろうから、残りはやっぱり地元か。
 それでいいのか? どこが補助金を取ってくるのが目的なのだ。理科離れが言われて久しいが、こんな簡単な損得勘定もできぬほどに、愛知の人間のアタマは、イカレてしまったのか? やはり愛知県は「愛
県」だったのか。

3,環境影響は?
 あるに決まっている。
 ちなみに、新空港に関しては、1999年6月からの環境影響評価法にかかる前に、駆け足で環境アセスメントを終了し、2000年8月1日から、埋め立て土砂の採掘先も確定せぬまま見切り発車で埋め立て工事にかかった。

・立地条件
 近場であり、先達である関空とよく比較されるのであるが、関空と新空港はかなり異なった立地条件である。
 海岸からの距離、水深など、2つの空港では大きく違う。

陸からの距離(km)

水深(m)

関西国際空港

5 

18

中部新空港

1.1

5〜10

 前島を埋め立てて、海岸部を破壊し、その1.1km先に幅4kmに及ぶ空港島を造る。狭い水路を挟んで島があれば海流次第ではここがつながり陸繋島ができる。常滑沖は伊勢湾の中でも、水深5m未満の面積が最も多いところである。ここがこうして潰されてゆくのである。
 最近、関空周辺で、魚が増えて云々、という報道がされて、空港を造っても魚が増えるじゃないか、という妙な理解をされているのではないかと思う。関空は、水深18m辺りの海域を埋めた。したがって、本来なら深い海に、浅い漁礁が造られた。ということであり、新空港の場合は、もともと5m前後の浅海域(ラムサール条約では「湿地」)を、前島込みで700ヘクタール強埋め立てるのである。これだけ違うもの2つを並べて、ほら、だから新空港を造っても魚が増えるしだいじょうぶなどという暴論はしないと思うが、あえて書いておこう。

・環境アセスメント(環境影響評価)について
 ある一定以上の規模で工事を行う場合に、それによって生じる環境への影響を調査、予測するものであるが、一般には、工事を行うという前提で、それに見合った結論が出されることから「アワスメント」と言われる。

 新空港の場合傑作であるのは、空港島と前島は、まったく別のアセスメントで行われていること(いつものことなのだが)。
 前島のアセスでは、「空港島など存在しない」という前提であるから、
「海岸から600m埋め立てるだけだから大丈夫。」
 空港島埋め立てのアセスでは、「前島の埋め立て? なにそれ。」と言う前提で進められている。もちろん、
 「海岸から1.7kmも離れているから大丈夫。なお、海流への影響も考えて、空港島の頭は丸めました。」
 となる。しかし、これが科学的ということか? 何をもって影響評価なのだ?

・埋め立て土砂は?
 新空港のための埋め立て土砂は、約7000万立方メートル。このため、伊勢湾、三河湾のぐるりから、山だの島だのを削って運んでくるのである。
 名付けて「伊勢・三河湾水系壊滅計画」
 幡豆町の里山は、工場団地を造るという名目で破壊され、崩した山砂は、山をぶち抜いてベルトコンベアで海岸に運ばれ、船で新空港埋め立て用に運ばれてゆく。「環境博」で海上の森は残しても、幡豆の里山はセットメニューの空港のために潰すのである。
 この他、三重県藤原町、南島町、大宮町、海山町、菅島、愛知県田原町など。
 どうですこの計画。環境博でちまちま、1350億円、数ヘクタールの攻防をさせておいて、裏では700ヘクタール、1兆5千億円強のプロジェクトが着々と進んでいる。

 くどいようであるが、これが「環境博」の看板のもとに行われる「環境」の愛知万博とセットになった、新空港である。この、巨大環境破壊事業は、いわば「万博」という通常火薬を起爆剤として作動する核兵器である。

4,その他
 今を去ること1年半。名古屋市は、ゴミの最終処分場計画を断念し、藤前干潟は保全されることになった。
 長良川河口堰や、ダム。そして藤前干潟埋立。万博、リニア、第2東名、新空港etc.と、中部地方は、環境破壊型の公共事業が目白押しでありました。今でも目白押しですけど、この御時世に、大規模な土木工事を伴う「開発」も何もないもんだと思うのですが、そこがほれ、後進県と言いましょうか、花のお江戸と天下の台所に挟まれた文化の狭間と言いましょうか、あんまりいいイメージのない愛知県ならでは。時代に乗り遅れること10年余。未だにかつての計画を引きずり、前任者の決めたことには反対しない、手を付けない。さらに、市民の方は見ない、意見は聞かない、まともな事は言わないと、どこかのお猿の様なこの姿勢。あ、なんだ、これならウチの職場の管理職とおんなじだ。

 先頃、2002年を目標に、藤前干潟をラムサール登録地にし、2005年の万博開催中に、ラムサール会議を誘致しようという、気でも違ったんじゃないかという話が新聞に出ていました。

 「ほおら、見て見て。ここがわずか100ヘクタールの藤前干潟で、そいでここだけはラムサール登録湿地で、この南20kmでは、ラムサール条約での湿地700ヘクタールを埋めてね。そいで藤前の上流のほうの山は環境博で使うから削っちゃったんだよお。すごいでしょぉ。」

 と、こんなふうに紹介する気なのだろうか。
 守る会から抜けといてよかったかもしれないねえ。

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